椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとよく耳にすると思いますが、ヘルニアの意味を知っていますか?
ヘルニアとは「出る」という意味です。つまり、椎間板ヘルニアとは椎間板が出るということになります。
鼠径ヘルニアや会陰ヘルニア、臍ヘルニアも同様にその場所に何かが出ているという意味ですが、椎間板ヘルニアとはかなり症状が違います。
椎間板は背骨の骨と骨の間にあるクッションみたいなもので、外側を繊維輪、内側を髄核と呼ばれるものが占めています。クリームパンのパンの部分が繊維輪で、クリームの部分が髄核とイメージすればわかりやすいかもしれません。
脊髄が背骨に守られるような形で、トンネルのように走っているのですが、その脊髄を椎間板が飛び出ることにより圧迫して、さまざまな神経症状が出ます。

腰の椎間板ヘルニア

原因
年齢によるもの、遺伝的なもの、外傷によるものがあげられます。
加齢によるものは、線維輪が年齢とともに変化することにより、線維輪が脊髄を押してしまうことで、椎間板ヘルニアが起こります(Ⅱ型椎間板ヘルニア)。
遺伝的なものは、髄核が生まれつき固くなりやすい犬種がいて、固い髄核がいきなり線維輪を突き破り、髄核が脊髄を圧迫します(Ⅰ型椎間板ヘルニア)。
その犬種を一般的に「軟骨異栄養犬種」と呼びます。
主に、ダックスフンド、フレンチブルドッグ、ウェルシュコーギー、ビーグル、シーズー、コッカースパ二エル、ペキニーズなどが含まれます。
特に、3歳くらいからの発症が多いと言われています。
最後の外傷によるものは、落下や事故などの強い衝撃により、椎間板が脊髄を圧迫することがあります。

椎間板ヘルニアのイラスト
画像引用:CLINIC NOTE No.158

症状
神経への圧迫度合いにより症状はさまざまですが、一般的にグレード分類で分けられてます。
圧迫度合いがひどくて神経麻痺が起きてきて、歩行困難や排尿障害、さらには痛覚消失まで起きてくることもあります。

グレード1 一番程度の軽い症状です。痛みだけの症状なので、段差の登り下りができなくなったり、抱き上げたときにキャンと鳴いたりします。
グレード2 よたよたとふらついて歩きます。歩けないことはないですが、真っ直ぐに歩けないことが多いです。
グレード3 重度な麻痺を伴う歩行障害がみられます。排尿は自力ででき、浅部痛覚があることでグレード3に分類します。
グレード4 より重度な麻痺が起こります。前足のみで後足を引きずって歩きます。浅部痛覚の消失しますが、深部痛覚はあります。排尿は自力でできますが、痛みのため我慢していることもあります。
グレード5 一番重度な麻痺です。排尿障害が起こり、深部痛覚も消失します。

進行性脊髄軟化症

グレード5のワンちゃんの10%程度がなるといわれています。この病気は椎間板ヘルニアから続発的に発症し、脊髄の麻痺が局部だけにとどまらず脊髄が軟らかくなり、頭の方に進行してくる病気です。最終的には数日で前足も動かなくなり、ほとんどのワンチャンが呼吸中枢を司る延髄まで軟化してしまい亡くなります。
現在、治療法は確立されておりません。数少ないですが、内科治療や外科手術の報告があります。

診断
基本的には椎間板が脊髄を圧迫していることを確認することが診断になるので、MRIの診断が欠かせません。
CT検査やレントゲン検査で椎間板が狭くなっていることや造影検査で圧迫されていることを確認できることもありますが、椎間板ヘルニア以外の同様の症状を示す疾患を完全に否定はできません。
グレードが低くMRIを撮らない場合は、身体検査やレントゲン検査を行い、できるかぎりの類似疾患を除外して、仮診断を行います。

横からの画像

椎間板横からの画像
赤い囲われている部分が脊髄です。
つまり、体を横からみている像です。
椎間板横からの画像
矢印部分が椎間板物質により、下から圧迫されている脊髄です。

正常な脊髄の断面

正常な脊髄の断面
赤い囲われている部分が脊髄です。圧迫がないので脊髄は正常です.
正常な脊髄の断面
正常な脊髄の断面です。
つまり、体を頭からみている像です。

異常な脊髄の断面

異常な脊髄の断面
赤い囲われている部分が脊髄です。椎間板物質によって、脊髄が圧迫されて左方向に 押されています。
異常な脊髄の断面
異常な脊髄の断面です

治療

グレード1 痛みだけなので、基本的には絶対安静と内科的に治療を行うことがほとんどです。痛みがずっと続く場合や内科治療に反応しない場合は、椎間板ヘルニア以外の病気を疑いMRI撮影を行うこともあります。
内科治療改善率90
グレード2 症状や麻痺の程度をみつつMRI撮影を行うか判断します。ほとんどの場合は内科的に治療を行います。
MRI撮影で重度な圧迫がみられる場合は、手術を行うこともあります。
内科治療改善率90%
グレード3・4 MRI撮影が必要になります。その後、ドリルで脊椎を少し削り、飛び出た椎間板物質を摘出する手術をします。
内科治療改善率50%
外科手術改善率90%
グレード5 早急な外科手術が必要になります。MRI撮影で進行性脊髄軟化症の可能性を確認した上で手術します。
外科手術改善率25〜50%
(発症からの経過時間により変わります)

摘出した椎間板物質
画像:摘出した椎間板物質

治療時に使う器具

ラウンドバーラウンドバー

手術後の治療
当院では、手術後リハビリを行い、徐々に神経が回復してきた場合は普段通りの生活に戻ってもらいます。
しかし、残念ながら神経の回復が乏しく歩行障害が残ってしまう場合は、車椅子やレーザー治療、リハビリを継続的に行います。
東洋医学、再生医療をご希望される場合は、ご紹介します。

予防
体質的なものが関わっているので、完全に予防はできません。
しかし、段差をなくすことやサプリ等で少し軽減することは可能です。

頸の椎間板ヘルニア

頸の椎間板ヘルニアは、麻痺の場所が前足から起こります。ひどい麻痺の場合は、呼吸中枢まで圧迫され、早急な外科手術が必要になることもあります。
腰の椎間板ヘルニアと同様、痛みだけの場合も多いですが腰以上に痛がり、痛みでひきつけを起こしたりする場合もあります。その場合は外科手術をすることもあります。

 

ネコちゃんの椎間板ヘルニア

ワンちゃんだけの病気と思われがちですが、ネコちゃんにも起こります。しかし、手術まですることはまれです。
ネコちゃんの椎間板ヘルニアはⅢ型ともいわれ、椎間板がヘルニアを起こしても、ゴムのように元の位置に椎間板が戻ることがあるからです。
その場合は内科的に治療を行います。
その他疾患との鑑別も必要なので、MRI撮影をして確定診断を行います。

 

 

一般的に椎間板ヘルニアの症状は悪化することがないといわれていますが、飛び出たばかりの椎間板物質は柔らかく、安静にできないと椎間板物質が動いてしまい、神経をより圧迫して、痛みだけの症状が突然、グレード3以上になることもあります。
なので、グレード1、2の内科治療を行う場合でもしっかりと治療を行う必要があります。
グレード3以上で手術が必要と判断された場合もより早い段階で椎間板物質を摘出する必要があります。手術は椎間板物質を摘出して神経の圧迫を取り除いているだけです。なので、神経自体を治しているわけではありません。手術で神経を治すことはできません。
腕に重たい石が落ちてきて、その石をすぐ退けるのと数ヶ月経ってから退けるのとでは、腕の治り方が違うのを想像してみてください。
手術が必要であれば、早い段階で圧迫物質を取り除き、リハビリを行うことがもとの生活に戻るための近道です。
何かご不明点があれば、当院までご相談ください。セカンドオピニオンもお待ちしております。